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実践チュートリアル

AIで資料や文書を分析する手順 — 要約・抽出・比較を実務で使う

資料分析を要約・抽出・比較の3工程に分解し、表構造の抽出で崩れやすい箇所と提出前の検証手順をあわせて解説します。

AI Jissen Lab 編集部 約5分
要点

資料分析は「要約」「抽出」「比較」という性質の異なる3つの作業に分解すると、AIの得意不得意の境界が見えてきます。特に表形式データの抽出では行の欠落や列のずれが起きやすく、出力を提出物として使う前に原本との突き合わせが欠かせません。本稿では実務で繰り返し使える具体的な手順と、崩れやすい箇所の見分け方を示します。

要約・抽出・比較を一つの指示にまとめない

「この資料を分析してください」という一文だけをAIに渡すと、返ってくるのは当たり障りのない概説になりがちです。原因は指示の粒度にあります。要約・抽出・比較はそれぞれ求める出力の形が違うため、一度に頼むと、モデルはどの基準で情報を選べばよいか判断できず、無難な要約に寄っていきます。

実務では、40ページ程度の委託契約書や四半期報告書を扱うケースが多いはずです。この規模の文書を1回のプロンプトで「要約して、重要な数字も抜き出して、前回版とも比べて」とまとめて依頼すると、抽出の精度も比較の網羅性も落ちます。作業を3つの独立したパスに分け、それぞれで別のプロンプトを組む方が、結果として速く終わります。

要約の実務手順 — 長い報告書をどう圧縮するか

長文の要約でまず崩れるのは、文書の後半です。モデルは冒頭の情報を重視しやすく、終盤の結論や数値が要約から抜け落ちることがあります。対策として、章や節ごとに分割してから要約させ、各章の要約を最後にもう一度まとめ直す二段階の手順が有効です。一段階目では「各章を3行以内で、固有名詞と数値は省略せず要約してください」のように制約を明示します。

プロンプトの組み立て方そのものは効果的なプロンプトの構造 — 指示・文脈・制約・例示の役割で扱った指示・文脈・制約・例示の型がそのまま応用できます。二段階要約では、一段階目の出力を二段階目の「文脈」としてそのまま渡す形になるため、途中の出力を人が一度目視で確認する工程を挟むと、誤りの伝播を防げます。

表構造の抽出でAIが崩れる場所 — 行の欠落と列のずれ

スプレッドシートやPDF内の表からデータを抜き出す作業は、AIが最も静かに失敗する領域です。特に、表がページをまたぐ場合や、セルが結合されている場合、モデルは行を1つ飛ばしたり、隣接する列の値を取り違えたりします。50行の見積書をCSV形式で抽出させたところ、ページ境界をまたいだ行がまるごと欠落していた、という失敗は珍しくありません。

この種の失敗が厄介なのは、出力自体は整った表の形をしているため、見た目では気づきにくい点です。抽出を依頼する際は、「合計行を含めて全ての行を出力し、抽出した行数を最後に明記してください」のように、検証可能な情報を出力に含めさせる指示を加えると、欠落の有無をその場で確認できます。列のずれについても、列見出しをプロンプト内で明示的に指定し、モデルに自由な解釈をさせない方が事故が減ります。

複数文書を比較させる — 差分抽出の具体的な手順

契約書の旧版と新版、あるいは競合3社の提案書を比較する作業では、AIに「表形式で差分だけを出力する」よう指示すると効率が上がります。条項番号・変更前・変更後・変更の性質(追加/削除/文言変更)という4列の表を指定し、根拠となる原文の該当箇所も併記させると、後から人が原本を開いて確認しやすくなります。

ただし、AIによる比較は表層的な文言の違いには強い一方、表現が変わっただけで意味は同じ条項を「変更あり」と誤判定したり、逆に意味が実質的に変わっているのに言い回しが似ているために「変更なし」と見落としたりすることがあります。契約や規約のように解釈が結果を左右する文書では、AIの比較結果を一次スクリーニングとして使い、リスクが大きい条項は必ず人が原文を並べて読み直す前提で運用するのが安全です。

出力を検証する手順 — 提出前に必ず行うこと

要約・抽出・比較のいずれも、AIの出力をそのまま提出物にしないための検証手順を組み込む必要があります。具体的には、抽出した数値の合計を原本の合計欄と突き合わせる、引用箇所のページ番号や見出しを実際に原本で開いて確認する、同じ指示を別のセッションで再実行して結果が大きく変わらないかを見る、という3点が最低限の確認になります。特に合計値の検算は、行の欠落を発見する最も簡単な手段です。

もう一つ見落とされがちなのが、分析対象の文書に何が含まれているかという確認です。顧客名簿や契約金額、人事情報が含まれる資料をそのままAIサービスに貼り付けてよいかどうかは、分析の精度とは別の判断が必要になります。この論点は生成AIの業務利用と情報セキュリティ・個人情報で扱った、貼り付ける前に確認すべき事項と直接つながっています。

手順を型にする価値と、型が通用しない場面

要約・抽出・比較を分けて設計し、各段階に検証を挟む手順は、定型的な文書であるほど威力を発揮します。もっとも、手書きのメモが混ざったスキャンPDFや、レイアウトが崩れた古い帳票など、構造そのものが不規則な文書では、この型を適用しても抽出精度は上がりきりません。そうした文書では、AIに一括処理をさせるより、まず人が構造を軽く整理してから渡す方が結果的に早く終わることもあります。手順を固定化することと、文書ごとに向き不向きを見極めることは、両立させるべき別の判断です。

参考文献

  1. Anthropic. "PDF support." Claude Docs, 本稿執筆時点.
  2. Anthropic. "Use XML tags to structure your prompts." Claude Docs, 本稿執筆時点.
  3. OpenAI. "What files can I upload to ChatGPT?" OpenAI Help Center, 本稿執筆時点.

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